代表 | 向野 博 |
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住所 | 〒170-0002 豊島区巣鴨1-29-3 |
TEL | 03-3946-9776 |
とげぬき地蔵で有名な巣鴨。巣鴨駅から徒歩3分の線路沿いに、「みどりや」さんはあります。経営者の向野博さんと泰子さんご夫妻は、昭和39年のご結婚以来、みどりや2代目として、たばこ販売一筋に過ごしていらっしゃるそう。「地域の人達の心の受け皿になりたい」とおっしゃる向野さんに、お話をうかがいました。
店内の、たばこがずらりと並んだ商品棚が圧巻ですね
実はこの棚、今年2006年の9月に設置したばかりなんです。外には自動販売機も3台ありますが、入り口から真正面に、たばこが並んだ棚を見つけると、それに興味を持って、店に入ってこられるお客様もいらっしゃるんですよ。やはり、いまどきこれだけ本物が並んでいる店は珍しいですし、自販機では分からないパッケージの微妙な色合いや質感も手に取って確かめていただけます。それに箱からは、少したばこの香りもしますからね。女性のお客様などは、並んだ商品の中から時間をかけて、かわいいパッケージで、いい香りのするたばこを探して買っていかれる方もいらっしゃいますよ。
お店はずっとご夫婦でやっていらっしゃるのですか?
みどりやの創業は昭和28年。以前は私の両親が経営しておりましたが、私達が昭和39年に結婚してから2年間は、家内が中心になって店を切り盛りしていました。その後は私も勤めていた会社を辞めて、たばこ屋専業でやっています。この辺りには、小さな会社が多く転勤もないため、同じ場所で長くお勤めになる方がたくさんいらっしゃるんですよ。中には、うちでたばこを10年以上買われている方もいるんです。常連さんは、銘柄も買う量も決まっていますから、何もおっしゃらなくても、こちらからいつものたばこをカートンで渡すんです。あるときそんなお客様に「自分を覚えていてくれるのがうれしい」と、言われたことがあります。こんなときは、私達も本当に励みになりますね。
今、ご家族はご夫婦2人なのでしょうか
ええ、私達には娘と息子がおりますが、息子は会社の転勤で宇都宮へ、そして娘は独立して、練馬に住んでいるんです。娘が家を出て、夫婦2人きりになったのは、ここ2年ほどのこと。娘は藤原歌劇団に所属して、オペラ歌手をやっているんですよ。昔から歌が好きで、ピアノも習っていたのですが、まさか音楽の道に進むとは思ってもいませんでした。今はオペラのステージやコンサート出演、それに音楽教師をしながら、いつも忙しく飛び回っています。うちにもレッスンを受けに生徒さんが来るため、毎週顔を出してくれますし、寂しくはないですね。ただ、2人で家を空けることができないので、すべてのコンサートになかなか顔を出すことができないのが残念です。
お店の前に、チリひとつ落ちてなくてとても清潔な印象ですが
理由のひとつは、たばこを吸う人のマナーが、ここ数年格段に向上しているからだと思います。ついポイ捨てをしてしまうのは、目立つ場所に灰皿がないからなんですよね。ですから、うちの前に灰皿を見つけた愛煙家の方は、必ず灰皿の前で立ち止まり、一服していらっしゃいます。
もうひとつは、家内が店の前や周囲を、こまめに掃除しているからではないでしょうか。きれいにしている場所に、わざわざ吸い殻を捨てて汚す人はいませんからね。
営業時間中はいつもお店に出ていらっしゃるのですか?
ひっきりなしにお客様が来るわけでもない商売ですが、私達はチャイムなどは取り付けず、必ずどちらかが店に出るようにしているんです。せっかくいらしてくれたお客様を、少しの間でもお待たせするのは申し訳ないことですし、自販機で買いたい時に、1万円を両替したい人もいらっしゃいますよね。どんな用件で入ってこられる方にも、すぐに対応できる姿勢を持つのは、店の経営者として、一番大事なことではないかと考え、このような形で実践しているんです。
駅からそう遠くないのに、お店周辺は静かな場所ですね
そうですね。この辺りはどちらかというと住宅街。しかも最近では、マンションが多く建ち並んでいます。マンションにお住まいの方は、普段人と話をすることは少ないと思うので、うちにいらしたときは、できるだけお声をかけるようにしています。一方で、近くには古くからの住宅もまだまだあり、高齢者の方もお住まいなんですよね。年配の常連さんがしばらく顔を見せてくれないと、「何かあったのかな」と、心配になります。逆にそういう人が久しぶりに来られると、とても安心しますしね。うちの営業時間は朝9:50からと少々遅めなので、お客様は通勤途中の一見さんというよりも、日中ご自宅にいらっしゃる方が多いんです。そんな地元のみなさんが、買い物だけでなく、寂しくなったらいつでも立ち寄れる、地域住民の心の受け皿になれればと、そんな思いでいつも営業を続けています。
周辺案内
とげぬき地蔵尊
“おばあちゃんの原宿”として有名な、巣鴨のとげぬき地蔵尊のある高岩寺。正式名称は「曹洞宗萬頂山高岩寺」といい、慶長元年(1596年)に江戸湯島に開寺、その後、下谷上車坂町を経て、明治24年(1891年)に、現在の地に移転した、由緒あるお寺です。境内には、ご本尊の「延命地蔵尊(とげぬき地蔵尊)」ほか、痛いところを洗うと、病気が治癒するといわれる「洗い観音(聖観音菩薩様)」などが納められ、いつも多くの善男善女が列をなして参拝する様子が見られます。また、参道はにぎやかな商店街となっており、お土産もののほか、日用品もリーズナブルな価格で手に入ることから、買い物客で混雑しています。
住所:〒170-0002 東京都豊島区巣鴨3-35-2
※JR・都営地下鉄三田線「巣鴨」駅徒歩3分
編集後記
オペラ歌手としてクラシック界の第一線で活躍中の自慢の娘さんを持つ、向野さん。奥様もよく通るステキなソプラノの声をお持ちでした。コンサートのパンフレットもたくさん見せていただき、お母様譲りの美しい声で、全国の音楽ファンを魅了されている様子が、よく伝わってきました。