代表 | 輿水 宏 |
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住所 | 大田区北千束2-46-1 |
TEL | 03-3729-4847 |
大田区北千束にある大岡山駅は、東急目黒線と大井町線が乗り入れる接続駅になっています。駅前には東京工業大学大岡山キャンパスがあり、併設されている百年記念館のモダンな建築デザインが目を引きます。駅から少し歩けば閑静な住宅街で、代々からの住人の方が多いようです。
こちらで、長くたばこ屋さんを営む輿水商店のご主人にお話を伺ってきました。
お店の創業はいつ頃でしょうか?
ご主人: 戦前ですね。祖母の代からなので、90年くらいになります。昔のことなので、詳しいことはわからないけど、何しろ古いことは間違いないです。
たばことお菓子などの食べものを扱う商店として創業しました。
ご主人がお店を見るようになってからどれくらい経ちますか?
ご主人:母と父が亡くなってからなので、まだ2〜3年ですね。母は93歳までお店をやっていたんですよ。母が倒れて一年寝ていたので、その間の店を弟が見てくれていました。そのまま今も弟が店を見ています。
今は売上げが下がっちゃいましたが、つい4〜5年前までは相当売っていたんですよ。母が亡くなり、だんだん売上げが落ちてしまいました。
長年の看板娘のお母様を慕って来てくれていたお客様が大勢いたのでしょうね。
ご主人:そうですね。母がやっていた頃の常連のお客様が減ってしまいました。店の前にちょっと車も停められたから、わざわざ遠くから車で通ってきてくれていた人もこなくなってしまったし。
ずっとたばこ屋さんとして商売をしてきた90歳過ぎの母に親しみを持って、お喋りを楽しみに来てくれていたような常連さんですから、やはり、自分たちではその雰囲気までは引き継げないですよ。ただ、そうやって母と父が大事にしてきた店なので自分たちの代で潰したくないという思いはあります。
お母様は本当にお客様の心をつかんでいたんですね。お客様とのやりとりや、ご商売をしていて思い出に残っていることはありますか?
ご主人:一番は、道を聞かれることですね。「誰々さんのうちはどこですか」とか。「何番地はどのへんですか?」とか。うちも警察じゃないので、詳しくはないですが、聞かれれば地図を出して調べて教えます(笑)。
あとは、父は長年、町会長、保護司、民生委員を務めていました。それで、ご近所のひとり暮らしのご老人とか、老夫婦の困りごとや急な病人がでると、父は情の厚い人なので、救急車で一緒について行ったりしてね。それが思い出にありますね。自分のじゃなくて、親の話で申し訳ないけど(笑)。
お父様も素敵な人だったんですね。それでは、ご商売を営む上で気をつけていらっしゃることは?
ご主人:人様とケンカをしないこと。お客様はもちろんのこと、ご近所さんとのお付き合いでも、誰とでもトラブルを起こさない。うちの家族には、争いをするタイプの人はいませんしね。商売をしていますし、そういうふうに育ってきましたね。
それから、母からはズルいことはするなと言われていました。ウソをつくなっていうことですね。例えばお客様から商品の代金を間違えて10円多く支払いいただいても、必ずお返しするというような。
儲かったってポケットに入れても、お客様は気づくものだよと。商売は正直にすることです。
周辺案内
東京工業大学百年記念館
東京工業大学創立100年記念事業の一環として計画され1987年に開館した。科学・技術に関わる大学の業績の保存と展示を行う。企画展示や講演会、ワークショップなどが常時行われている。
目黒区大岡山2-12-1
東急目黒線「大岡山」下車徒歩1分
千束児童遊園
大岡山駅近くにある児童遊園。立地の高低差を生かした滑り台や動物の置き型遊具が設置されている。園内に植樹された樹影が夏でも過ごしやすい癒やしの空間を作っている。
大田区北千束3-15-1
東急目黒線「大岡山」下車すぐ
編集後記
お話を聞いていると、先代のお母様、お父様とも本当に素晴らしい方だったんだなと感じました。お店には、ご商売に関するお母様へのたくさんの賞状が飾られ、お父様は国から受叙勲されています。ご商売と、地域の安全とよい環境を整えるために、懸命に取り組んでいらっしゃったんだと感じました。
もちろん、ご主人と弟さんのご兄弟で切り盛りする今のお店も同じです。明るく親切に対応していただき、楽しい時間でした。
大岡山の歴史あるたばこ屋さん、お近くにおいでの際は、ぜひお立ち寄りください。