代表 | 渡辺 泰男 |
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住所 | 文京区向丘1-1-17 |
TEL | 03-3811-0833 |
文京区といえば、日本の大学のトップに君臨する東京大学の本郷キャンパスがあることから、公立・私立問わず教育機関が多く、アカデミックな印象があります。
今回お訪ねした高崎屋商店さんは、本郷通りをはさんで、東京大学農学部正門前にある、歴史ある酒屋さん。
ここで長くお店を営むご主人にお話を伺って来ました。
お店の創業はいつ頃でしょうか?
ご主人:江戸時代の宝暦年間、1750年代ですね。ですから、創業からは260年くらい経ちます。
屋号が高崎屋なのに、私が渡辺というのは、創業者の高崎家が経営していたのは明治20年までで、その後は渡辺という番頭が継いだからなんです。
渡辺では私が4代目で、初代の高崎から数えると9代目になります。
ご主人で9代目ですか。それほどの歴史あるお店はなかなかないです。
ご主人:店が残ったのは、焼けなかったというのもあります。関東大震災、太平洋戦争でも無傷でした。ここは高台で地盤がしっかりしていたのと、戦時中は、東大があるので、米軍はこのあたりを攻撃の対象にしなかったと聞いています。
店が長く続いたのは、お酒のブランドを持っていたからでしょうね。最初は「江戸一」、渡辺になってからは「万物一」という清酒を造って、大正7年に商標も取りました。
戦後はやめましたが、当時はこのブランドでお酒や醤油を売って、特に醤油が売れたと聞いています。
たばこはいつ頃から扱い始めたのでしょうか?
ご主人:たばこは免許制になってから、すぐに許可を取ったようです。
今は残念なことに、店の前に置いていた灰皿を撤去しました。文京区は学校が多いので、店の前を通る子供に煙を吸わせたくないという保護者からのクレームがきたんです。
自動販売機のそばに灰皿を置いていたので、自販機で買ってその場で一服というお客様が多かったのでしょう。灰皿を撤去したとたんに自販機の売り上げが落ちてしまいました。
最近、煙の出ない加熱式のたばこが出てきたので、これから改良されていくでしょうし、期待したいですね。
お客様は地元の常連さんが多いでしょうか?
ご主人:7割は地元の常連さんですね。東大農学部はお酒の研究もしているので、昔は学生さんや先生がよくお酒を買いに来てくれましたし、大学に配達もしていました。
ところが、今は学生さんが先生と飲んだりしないし、東大が独立行政法人になってからは、経費削減のために事務職員なども残業しなくなって、お酒を飲まなくなったみたいですよね。
それでは、ご商売を長く続ける上で気をつけていらっしゃることは?
ご主人:番頭で4代続いているものですから、やはり次の世代へ繋げることですね。
私が親から引き継いだときも、そう言われました。番頭はお店をあずかっているという気持ちなんです。自分が店をできなくなったら、次の代に引き渡す。
今は店のほとんどの仕事を息子がやってくれていますが、次の代へというのは、自分の息子に限らず、いい人がいたら、その人に任せたっていいんです。そうやって繋いでいくことですね。
周辺案内
上野英三郎博士とハチ公像
ハリウッドで映画化されたことにより、世界的にも有名になった忠犬ハチ公。ハチ公が待ち続けた主人は東大農学部教授の上野英三郎博士であることから、2015年に東大農学部正門に上野英三郎博士とハチ公像を設置した。
文京区弥生1-4-8
東京メトロ南北線「東大前」より徒歩1分。
西教寺
浄土真宗本願寺派の寺。寛永年間(1624-1644)釈了賢が湯島三組町に一寺を建立し、元禄2年(1689)に現在の地に移った。朱塗りの表門は、文京区の有形文化財に指定されている。
文京区向丘2-1-10
東京メトロ南北線「東大前」より徒歩1分。
編集後記
260年以上続くお店は、なかなかあるものではありません。最後にご主人が仰った「繋いでいくこと」という言葉に長い歴史の重みを感じました。
そのような歴史あるお店なので、建物の建て替え時に、蔵にある貴重な文化財を「文京ふるさと歴史館」に寄贈したり、日本公衆電話会の東京統括支部長をされ、平成24年には春の褒章を受賞されるなど、ご主人は地域の名士でもあります。
お店の歴史はもちろんのこと、周辺地域のお話は興味深く、勉強にもなりました。東大農学部正門前の歴史あるたばこ屋さん、ぜひお立ち寄りください。