代表 | 青木 照廣 |
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住所 | 〒111-0021 台東区日本堤1-31-2 |
TEL | 03-3873-5472 |
台東区の北部に位置する日本堤。下町風情あふれる商店街、「いろは会商店街」の近くにマンガ『あしたのジョー』の舞台になった泪橋があることから、「あしたのジョーのふるさと」として町おこしもしています。そんな、いろは会商店街にお店をかまえ、同商店街振興組合の理事長でもある、平乃屋のご主人にお話を伺ってきました。
お店の創業はいつ頃でしょうか?
ご主人:祖父が大正7年に下駄屋として店を始めて、私で三代目になります。父は「お前は下駄屋の三代目になるんだから」ってずっと私に言ってきましたが、下駄や草履はもう売れない時代でしたからね。
全然儲からないのに何故、下駄屋をやっているんだろうと思っていましたよ。うちの父が店をやっているときから貧乏で困ってました。それでも昔気質の頑固親父なので「オレは下駄屋の息子に生まれたんだから他のことはやらない」って言ってましたね。
もうお金じゃなくて「下駄屋の旦那さん」って言われたいだけの意地ですね(笑)。私が39年前にたばこの許可をもらったときも「うちは下駄屋なんだ!」って父と大喧嘩しましたよ(笑)。儲かるとか儲からないとかじゃなくて見栄ですね。昔の江戸っ子って見栄っ張りでね。
ご主人がお店をみるようになってからは、たばことお総菜のお店なんですね。
ご主人:あとは、午後4時から7時までの3時間の間は、焼き鳥もやっています。たばことお総菜は正面の窓口で売っていますが、側面で焼き鳥を焼いて、テイクアウト専門でやっています。
ここらへんはお年寄り夫婦やひとり暮らしのおばあちゃんが多いので、お総菜も毎日同じものを出すと売れないんですよ。ですから、シュウマイとギョウザは毎日売っていますが、その他は日替わりで毎日違うものを売っています。おかげさまでそれが良く売れますね。
このへんのおばあちゃんたちは、夕方は外に出ないんですよ。だから、朝10時の開店と同時に店に買いに来て、夜のぶんまで買っていくので、午後のいまじぶんには、もうほとんど総菜は売り切れちゃっています。
ご主人は、この「いろは会商店街」の理事長も務められていますね。『あしたのジョー』のふるさと、ということで盛り上げていらっしゃるんですよね。
ご主人:台東区商店街連合会の石山会長が色々考えてくれて、「ここはジョーのふるさとだから、それを利用しない手はないよ」って言ってくれました。とても私なんかではできませんでしたが、会長が講談社さんにかけあってくれたんです。
ちばてつや先生ともお会いして、本当にいい先生で「いろは会を応援したいんだけど」って言ってくださいました。『あしたのジョー』を描くときに、ずいぶん山谷を歩いて調べたみたいで、このへんのことも良く知ってらっしゃるんですよ。
商店街の理事長さんで、たばこ組合の委員もされていて、お店もあるしお忙しいでしょうね。
ご主人:忙しいですね。休みの日は寝てますよ。休みの前日は麻雀やって寝てないんですよ。そっちのほうが本職になるかな?って思ったくらい。
『麻雀放浪記』の阿佐田哲也先生に「青木くん、いい麻雀うつね」って言われて調子に乗ってプロテストを受けて、20年くらいプロでやってました。
店をやりながらだったので、他のプロ仲間からは「商売やりながらなんて、プロで一流になれない」ってバカにされてましたよ(笑)。
そういう世界でした。年をとってくると記憶力も低下するんでしょうかね。阿佐田先生が「牌がひけなくなる」って言ってましたが、それがわかるようになって、やめたんです。
プロだったんですか。それはすごいですね! それでは、ご商売をされる上で気をつけていらっしゃることは?
ご主人:おかげさまで、たばこも売れているんですが、この商店街自体が売れなくなってきて困ってるんです。商店街の理事長になったときも、どうやってここを復活させられるかって考えました。
このへんは、吉原のためにあったような商店ですから、赤線廃止で吉原がなくなって、そのあと山谷のドヤ街にいる労働者がこの商店街で買ってくれたりしたんですが、その方たちも年を取って亡くなったりで街が沈んじゃってるんですね。それで、あしたのジョーの一環でグッズを売れば、みんな儲かって笑ってもらえるかなと、ずいぶん骨を折ったんですが、版権のある商売なので、なかなか簡単ではないですね。
商店街自体が盛り上がって、みんながニコニコしてくれれば一番いいですね。それが今、いちばん気にしていることです。
周辺案内
永久寺
寛永年間の中頃、幕府より街道の安全を祈願する五色不動のひとつとして、日光街道(現・昭和通り)に面した、この永久寺が目黄不動尊に選ばれた。創建は古く、南北朝時代とされている。
台東区三ノ輪2-14-5
東京メトロ日比谷線「三ノ輪」より徒歩1分
一葉記念館
樋口一葉の処女作『闇桜』の原稿や、名作『たけくらべ』の草稿、その他、一葉の短い生涯にまつわる資料を展示している。昭和36年に開館したこの記念館は、女流作家の単独記念館としては日本初のもの
台東区竜泉3-18-4
東京メトロ日比谷線「三ノ輪」より徒歩10分
編集後記
取材中にも、お客様が買いに来て「なに? 取材?」等、気軽に話しかけていく、下町らしい気安さのお店です。ご主人は、自分のお店だけでなく商店街の理事長として、商店街全体の盛り上がりに心を砕いていらっしゃいました。お店の近くには、昔、吉原があり、いろいろな物語が生まれました。浅草にも徒歩圏内ですし、歴史ある有名な天丼屋さんも近くにあるので、このあたりを散策するお客様を増やし、もう一度盛り返してほしい街です。実際歩いてみると、興味深い名跡もありますので「あしたのジョー」のフィギュアが出迎える、いろは会商店街にも是非立ち寄ってみてください。