代表 水野 正男
住所 〒169-0051  新宿区西早稲田1-9-36
TEL 03-3209-4075

 学生の街・早稲田にて、早稲田大学の学生帽を製作、販売している水野帽子店さん。店頭に並ぶ早稲田大学の学生帽はすべて、ご主人の手作業による丹誠込められた逸品です。古くから、この学生の街でお店を営むご主人と奥様にお話を伺ってきました。

創業されたのはいつ頃でしょうか?

お話を伺ったご主人

 ご主人:帽子屋としては、長いんですよ。大正時代から、父が神田で帽子屋をしておりました。早稲田に店を移したのは、戦後です。神田にいたときは、父が海軍の将校の帽子を作っていたんです。日本の海軍では元帥や大将になると、ナポレオンの肖像画にあるような二角帽子をかぶって房をつけるんです。肖像画のナポレオンは横にかぶっていますがね。海軍は外国に行きますから、どこの国に行っても負けないような服装をしていました。学生帽は、余暇があるときに作っていたんです。その流れで今は、学生帽を作っています。

それではご主人で二代目なんですね。

先代(ご主人のお父様)から使用している手ミシン、もちろん現役です。

 ご主人:そうですね。今は早稲田大学の学生帽を作っていますが、今年は震災の影響で、大学の始業式も卒業式もなかったので、数は出ていないですね。もっとも、最近の大学生は学生服を着ないので、毎年毎年そう、たくさん帽子は作りません。私も80歳を過ぎていますし、帽子はすべて手作りですので、今くらいの数でちょうどいいです(笑)。

たばこを扱い始めたのはいつ頃ですか?

たばこの窓口です。

 ご主人:40年くらい前からですね。以前、すぐ近くに文房具屋さんがあって、そこにたばこも置いていたんですが、店主が病気をして店を閉めてしまったので、うちに来るお客様が「不便だからたばこも置いてほしい」って言うので、申請したんです。たばこは扱っていて楽しいですよ。帽子だと、始業式、卒業式のある一年に一度ですけど、たばこは、毎日お客様がいらっしゃって、お話しできますから。

タスポが導入されてから、ご苦労はありましたか?

たばこと帽子のショーウインドウが並んでいるのは、ちょっと珍しいかも?

 ご主人:いいえ。かえっていい運動になってますよ。というのも、外国のたばこは店に置ききれなくて、自動販売機に入れているんですが、タスポのないお客様が外国たばこをお求めになるときは、店の外の自動販売機から出して、お渡しするんです。これが毎日のいい運動になるんですよ(笑)。運動のつもりでやっているから、面倒だなと思ったことはないですよ。お客様は学生さんが多いですが、新入生だと、入ってきたときは18歳か19歳でしょ。ですから、新学期はお客様の顔をよく見て、「あれ?」と思えば学生証を見せてもらいます。そのへんはよく注意して見極めていますね。

長くご商売をされていて、気をつけていらっしゃることは?

早稲田大学と大隈庭園にほど近いお店です。

 ご主人:自分の仕事を手を抜かずにやり遂げることですね。子供の頃から父が仕事をする姿を見てきていましたが、父の作る帽子は本当に名人芸でしたから、今でもあそこまではいかないなと思います。

 奥様:主人は帽子作りには、本当にこだわっているんですよ。まったく手抜きをしないですから。帽子の裏の人が見ないようなところにまで、こだわって綺麗に仕上げるんです。たばこのお客様にも、わざわざ店まで足を運んで買いに来てくださるというので、帽子のお客様と同じように、丁寧に対応しています。

 ご主人:この間、旅行に行った際に店を数日閉めていたら、お客様に「おじさん、入院でもしたのかと思ったよ」って言われました(笑)。今まで店を閉めることがなかったからでしょうね。お客様にそう言っていただけて、ありがたいことですよね。

周辺案内

早稲田大学坪内博士記念演劇博物館

〒169-0051 新宿区西早稲田1-6-1
東京メトロ東西線「早稲田」下車 徒歩7分

 昭和3年、坪内逍遙70歳のときに、半生をかけて翻訳した『シェークスピヤ全集』全40巻の完成を記念して、設立されました。建物は16世紀イギリスの劇場「フォーチュン座」を模して設計されたものです。

法輪寺

〒169-0051 新宿区西早稲田1-1-15
東京メトロ東西線「早稲田」下車 徒歩7分

 日賢上人が開山した日蓮宗のお寺です。号は萬年山といい、傾斜のある早稲田通り沿いに位置しているため、本堂からの眺望が素晴らしい。境内は新宿区みどりの文化財保護樹木に指定されているケヤキや、もみじ、松、椰子の木などの緑濃い樹木に囲われています。

編集後記

 帽子はすべの手作り、洋裁学校を出た奥様が仕上げをするという、まさに夫婦二人三脚で、伝統ある帽子店を営んでこられました。ご主人のお父様が日本海軍の元帥てご主人である東郷平八郎や山本五十六の帽子を作っていたというお話を聞いて、感銘を受けました。お父様譲りの職人気質と確かな技術で、帽子作りにこだわるご主人の姿に、自然と頭が下がります。今では、毎日たばこを買いにいらっしゃるお客様とお話しするのが楽しいと仰るご主人。素敵なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。