代表 中嶋 年子
住所 〒166-0001  杉並区阿佐谷北1-5-1
TEL 03-3338-0707

 大正から昭和時代にかけて、井伏鱒二、与謝野晶子、太宰治、三好達治、徳川夢声など、多くの文人が住み、阿佐谷文士村と言われた文化の香り高い住宅地です。文士村と言われた名残か、古書店が多く、駅周辺には大小取り混ぜた飲食店が軒を連ね、活気ある街です。そんな阿佐ヶ谷駅前にお店を構える木村屋さんにお話を伺ってきました。

創業されたのはいつ頃でしょうか?

整理された棚。在庫は過剰には持たず、賞味期限に気を遣っています。

 中嶋さん:私がお嫁にくる前のことなので、詳しくは知らないんですよ(笑)。舅に聞いた話では、以前は中杉通りの信号のところに曾おじいさんが店を構えたんですが、区画整理で今の場所に引っ込んだのが昭和23年です。ですから、店を始めたのは昭和の初め頃でしょうか。そのときから木村屋という屋号でした。今のたばこ専門店になる前はパン屋だったんです。

たばこ専門店としては間口がとても広いですものね。

店内は懐かしいような、ほっとする空間です。

 中嶋さん:前はパンを並べるショーケースがあって、ジュースを売る冷蔵庫も置いていたんです。たばこは窓口のほうに置いていました。パン屋をやめたのが昭和64年です。パンのケースを取り払って内装を直して、たばこ専門店にしたのが平成4年ですね。

今は中嶋さんおひとりでお店をみているのですか?

お孫さんが書いてくれています。

 中嶋さん:そうですね。主人が平成9年に亡くなったので、そのあとは私ひとりで、時々娘が手伝いにきてくれます。朝10時に店に来ても、外の自動販売機に商品を入れたりするので、シャッターを開けるのは11時頃になりますね。以前は山ほど商品を運んで詰めていましたが、今はそれもないので、時間的にはあまりかからないですけどね。

お店の外にある灰皿の掃除も大変でしょうね。

明るくお話をしてくださった中嶋さん

 中嶋さん:外にある灰皿も、杉並区からはなるべく置かないようにと言われているのですが、これを取り払ってしまうと、駅前にも少しあるだけなので、たばこを吸う場所がなくなってしまうんですよ。店の敷地内に設置しているので、大丈夫なんですが、狭いので吸う人が道路にはみだしてしまうこともあるんです。そうすると違反ですぐに罰金になってしまうから、そうならないようにお声をかけることもあります。店が休みの日曜日にも灰皿だけは出しておきます。夜は一度店に来るので、そのときに中にしまいます。そうじゃないと、本当に吸うところがなくなってしまいますものね。

お店を続けていく上で気をつけていらっしゃることは?

阿佐谷駅北口すぐの大きなたばこ屋さんです。

 中嶋さん:気を遣っていることは、たばこの賞味期限です。娘にはそんなに神経質にならなくてもいいんじゃないのって言われるんですけど、私の気持ちがよくないんですよ(笑)。自動販売機の稼働率が以前より低くなっているぶん、自動販売機に入れたほうが日付が古くなってしまうことがあるんですよね。ですから、自動販売機に入れた商品の賞味期限をノートに書いておくんです。店売りのたばこの賞味期限は9月なのに、自動販売機は8月、ということにならないように入れ替えたりもします。それはとても気を遣っていますね。お客様には新鮮なものを吸っていただきたい。それをしないと自分がいやなんですよね(笑)。

周辺案内

世尊院

 真言宗豊山派の寺院で、正式名称を阿谷山正覚寺世尊院といいます。本堂より中杉通りを挟んだ西側にある観音堂には、杉並区指定有形文化財であり、室町時代の作と言われている木造聖観音菩薩立像が安置されています。

〒166-0001 杉並区阿佐谷北1-26-2
JR中央線「阿佐ヶ谷」下車 徒歩2分

阿佐ヶ谷神明宮

 寛政12年に著された「江戸名所図絵」によると、日本武尊が東征の帰途、阿佐谷で休息し、尊の武功を慕った村人が旧社地(現在の阿佐谷5丁目一帯)に一社を設けたことが始まりと言われています。天照大御神を祀る歴史ある神社です。

〒166-0001 杉並区阿佐谷北1-25-5
JR中央線「阿佐ヶ谷」下車 徒歩2分

編集後記

 店内に入ると、昭和の日本家屋独特のあたたかい雰囲気にほっとする思いです。間口が広いので、とても入りやすく、お店の外にある灰皿で一服していこうという気分になります。お店が休みの日でも、外に灰皿を設置する中嶋さんのお客様へのお心遣いがよく伝わります。阿佐ヶ谷駅前にある頼れる街のたばこ屋さんでした。