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【1947/昭和21年】
戦後の東京はまだ復興していませんでした。
小学校に上がる少し前、校長先生をしていた伯父の家に一人で初めて泊まりに行った時のことでした。駅から伯父の家へ歩いて行く道筋に「たばこ屋さん」がありまして、看板娘ではなくおばあさんが店番をしていました。長谷川町子さんの「意地悪ばあさん」にそっくりでしたっけ。
大きな看板にひらがなで「たばこ」と書いてあったのを見て、私が覚えたばかりのひらがなを、思わず立ち止まってたどたどしく「たばこ」と読むと、子供好きの伯父はニコニコして「良く読めたねぇ、小学生みたいだ!」と誉めてくれたのです。それが非常に思いがけなくて、嬉しいやら照れくさいやらで、もじもじしてしまった記憶が残っています。
テレビなど無い時代でしたから、子供も遊びも素朴でホンワカしていたのでしょう。伯父、叔母、可愛がっていたテリヤ犬のライトも今はおりませんけれど、子供の時分を考えると、不思議に決まって浮かんでくる懐かしい風景です。
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